追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
そして便利屋の彼らにとって、きっと掃除はもっとも依頼の多い仕事のひとつ。その手腕は間違いなくプロ級と言えるだろう。
「さっそく宿に向かおう」
「うん! すみませんがシーラさん、後をよろしくお願いします。行ってきます」
「こっちの事は心配しないで。気を付けてね」
私はエプロンを外すと、気を引き締め直してカーゴとルークに続いた。
リリアーナが泊っているマイベリー村に一件だけある宿は村の西端、お店から王都を背にしてさらにカダール皇国側に進んだ場所にある。
「アイリーン!」
「キャッ!?」
宿に向かう道中、カーゴが突然、私を胸に抱き締めて道端に押しやった。
直後、後ろからやって来た大型馬車が石ころをまき散らしながら、物凄い勢いで私たちの横を通り過ぎていった。
「大丈夫か?」
チラリとしか見えなかったが、黒塗りの高級馬車の側面には貴族の家紋が描かれていたようだった。
……どこかで見た事のある家紋のような気もしたが、思い出すには至らなかった。
「うん、平気よ。ありがとう。……それにしてもなんだか今日、やたらと馬車が多いよね?」
実は、ここまで私たちを追い越して行ったのは今の馬車だけではなかった。しかもそれらは皆、物凄く急いでる。