追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました

 突然、傍聴席からリリアーナの父親が激昂して叫んだ。
 リリアーナがビクリと肩を跳ねさせて、父親を振り返る。その目は零れ落ちそうなくらい見開かれ、唇は気の毒なほど震えていた。歯と歯がぶつかって立てるカチカチという音が響き渡った。
「コルトー子爵、俺は貴殿の発言を許していない。これ以上審議を乱す事は許さん」
 カーゴの地を這うような声音を受け、コルトー子爵は黙った。
「チッ! この若造が!」
 しかし、私の耳にはしっかりとコルトー子爵が吐き捨てた悪態が届いていた。カーゴの耳には届いていなかったのか、特段の追及はなく審議は再開された。
 そうして証拠調べが終わり、審議は終盤に差し掛かる。
「……あの」
 刻一刻と近づく閉廷を前に、私はついにおずおずと右手を上げた。
「どうしたアイリーン?」
「私から、リリアーナに質問をしてもいいでしょうか?」
「もちろんだ」
 カーゴの許しを得て、リリアーナに向き直る。けれど、リリアーナと私の目線は合わなかった。
 リリアーナは頬に滂沱の涙を伝わせて、空虚な目をして抜け殻のように座っていた。
 特段、意図があったわけではないのだが、気付いた時には席を立ち、私はリリアーナへと歩み寄っていた。おそらく、一段高くなったひな壇の上から問い質す事はしたくないと、無意識下でそう思ったのだ。
「ねぇリリアーナ、どうしてこんな事をしたの?」

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