追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
それというのも、ゲーム内でエメラルドの髪留めは”アイリーンの手荷物”から発見される。それを覚えていた私は対策の手を回し、屋外運動の授業にわざわざ手提げ鞄から運動着の袋、ランチバックまで全部を持って出た。しかし、発見されたのはまさか、音楽室に保管していた私のコントラバスのケース!
……声を大にして問いたい。天王寺桃子よ、果たして弦楽器の大親分、コントラバスをしまったケースは手荷物という括りでいいのか!? 前世の航空機の手荷物機内持ち込み基準なら、この大物は問答無用で預け入れの荷物だ!!
「……私から伝える事はありません」
荒くなりかけた息をなんとか整えて告げた瞬間、周囲がどよめいた。
「なんと厚顔無恥な発言を……!」
激昂し、顔を真っ赤にした学園長が、私に向かって踏み出した。
「学長先生、おやめになって! 主は申しております、右頬を打たれたら左頬を差し出せと。たとえ我が身が階段から突き落とされようと、私はアイリーンに対し、なにも思うところなどありません!」
するとすかさず、リリアーナが学園長の腕に縋って叫んだ。
「なんという慈悲深さだ。其方は学園の鏡などでは足らん。其方はまるで天使だ」
……リリアーナに差し込む後光。……周囲を舞う、清廉な光のシャワー。
甚だ遺憾ではあるが、この光景だけ見れば、学園長の言葉に異論など生じる隙もない。
真っ黒悪魔を、天使にだって仕立て上げる圧巻のライトワークに、ゴクリと喉を鳴らす。やはり『桃色ワンダーランド』の演出構成は尋常じゃない――!