追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました

 ちなみに、ひとつ注釈を入れさせてもらえば、この階段から突き落とされたという一件は、むしろリリアーナの身から出た錆……。いや、おそらくリリアーナに私を突き落とそうというまでの意図はなかった。ただし、リリアーナが階段で私を押そうとした事は事実だ。
 事件のあったあの日、私は階段からの突き落としという、冗談にしたって質の悪いゲーム内のイベントに恐々としていた。
 私が意図的に危害を加える事は誓ってないが、不慮の事故にしても、リリアーナを階段から突き落とすなど絶対にしたくなかった。リリアーナに触らなければ突き落とす事もないと考えた私は、極力リリアーナとの接触を避けた。階段を使う際は特に、周囲にリリアーナの姿がないか細心の注意を払った。
 ところがだ、その日最後の移動教室で階段を下っている時、突然後ろから「なに朝から私の事避けてんのよ?」と囁かれた。ハッとして振り返れば、リリアーナが私を見下ろして不遜な笑みを浮かべていた。それを目にした瞬間、私は本能的に身を捩り、跳ぶようにしてリリアーナから距離を取った。それは、万が一にも私が触れて、リリアーナに危害を加えてはいけないという、防衛本能に衝き動かされての行動だった。
 けれどこれが大誤算で、その時リリアーナが私に向かって伸ばした手は、あてる対象を無くしてスカッと宙を切った。リリアーナは大きくバランスを崩し、ピンヒールの足で踏ん張る事もままならずに、そのまま階段を転げ落ちた。
 私はリリアーナを助けようと咄嗟に手を伸ばしたけれど、その腕を掴むには至らなかった。直後、落下したリリアーナが奇跡的に無傷と知り、私は安堵の息を吐いた。

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