追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
キョロキョロと忙しなく首を巡らせながら、雨で霞む王都の街を進む。幸いにも雨足は弱く、俺はある程度の意識を保ったまま、初めての街を楽しむ事が出来た。
そうして案の定、みすぼらしい野良犬風情の俺に厭わしい目を向ける者はいても、奇異の目を向けてくる者はいなかった。
――キュルルルル~。
もう幾度目にもなる腹の虫の主張に、溜め息を零す。
……サンドイッチを食べてから来るんだった。
父の差し入れに手を付けなかった事が悔やまれた。
……ん? なにやらいい匂いがするな。
力なく歩いていると、前方から漂う甘い匂いに気付く。吸い寄せられるように店先に行き、クンッと鼻をひくつかせた。
……これは、シフォンケーキだ!!
『汚らしい犬っころだね! お前が店先にいたんじゃ商売あがったりだよ、あっちにお行き!』
すると、店先で立ち止まった俺に向かい、女店主が手にしたフライ返しで「シッツシッ」と追い払う真似をする。
『キュゥン……』
そこにいるだけで邪険にされてしまうのは、空腹のまま半日近く雨の中を歩き続けた心に堪えた。
項垂れて、てくてくと王都の道を進んだ。
しばらく行くと、王都の中心に悠然と構えるセント・ヴィンセント王立学園の正門前に、一人の少女が立っているのに気付く。
傘を手にした俺と同年くらいのその子は、何故か親の仇でも見るような目で学園を睨みつけていた。