追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
ほんの少し興味を引かれながら、少女の横を通り過ぎる。
『たぶん、将来この学園に通う事は避けられない……』
……へぇ。あの子は将来、この学園に通うのかぁ。
『どっちにせよ、暢気に逆ハーエンドを目指してた当時の自分を殴ってやりたいわ』
ん、なんだって? 続く「逆ハーエンド」という台詞に虚を突かれ、思わず俺の足が止まった。間近から見上げれば、少女の瞳が近隣諸国でも珍しい暗褐色をしている事に気付く。
俺は何故か目を逸らす事が出来ぬまま、食い入るように少女の瞳を見つめていた。けぶるような、ミステリアスなその瞳に、どうしようもなく胸が騒いだ。
すると突然、少女がガバッと俺に顔を向けた。キラリと輝く暗褐色の瞳が、俺の姿を捉える。
――トクンッ!
少女の瞳に映る己を自覚すれば、一気に脈が速くなった。
駆け足で打ち付ける鼓動は、苦しいくらいだった。だけどこの後、俺の心臓は更なる衝撃に、跳ねる事になる。
『やだ! あなたビショ濡れじゃないの!?』
え?と思った時には、俺は少女の腕に濡れた体を抱き寄せられて、ハンカチをあてられていた。
……比喩でなく、俺は驚きで心臓が止まってしまうんじゃないかと思った。
だけど少女は、俺の動揺などまるで気付かずに、小さな手で濡れそぼつ体を熱心に拭っていく。その手に、一切の躊躇はなかった。
『ふふふ。こんなふうに私が触ろうとすると、いつも皆逃げちゃうけど、あなたは逃げないね? 人慣れしてるのかな? ……だけど、この皮膚は可哀想ね。こんなにただれちゃうなんて、きっと栄養が足りずに弱っているのね』