追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
拭い終わった少女は俺を連れ、木陰に場所を移った。そうして、ただれていない俺の鼻先を労わるように撫でた。
その手のひらの温もりに、剃られてしまい、もうないはずの体毛がブワッと逆立つような、そんな感覚がした。
『あ、……そうだわ!』
俺の鼻先から手を離すと、少女はポケットの中を漁り出す。
『……いち、にい、さん。……うん! ひとつなら買えそうだわ! ねぇあなた、ここの木陰で待っていて!?』
ポケットから取り出した硬貨を数えると、少女はパァッと表情を輝かせ、俺に言い置いて駆け出した。
駆けて行く少女の背中を見ながら、体温が上がるのを自覚していた。
……あの子は、俺の事が怖くないんだろうか? 今の俺は皮膚を患った野良犬なのだ。噛みついたり、引っかいたり、されるかもと思わないのか?
この風体で半日近く歩き回り、はじめて向けられた少女の優しさはこそばゆくて、そして彼女の微笑みは俺の目にひどく眩しい。
この、ドキドキとした落ち着かない思いはなんだろう?
……離れたくない。ずっと、あの子と一緒にいたい――!
心の中で呟けば、全身がカッと燃え立つように熱くなった。
『お待たせ!』
息せき切って戻ってきた少女の手には、俺を「シッシッ」と追い払った女店主の店のシフォンケーキが握られていた。
『はい、これを食べて!』