追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
俺は手早くバスローブを羽織ると、室内に備え付けのシャワーブースに向かった。通常、寮の個室にシャワーは付いていないのだが、貴賓室にはシャワーブースが設けられていた。
本来、特別待遇は俺の好むところではない。しかし今回は事情もあり、セント・ヴィンセント王立学園側からの申し出を受けていた。
実際に貴賓室に入寮してみると、シャワー以上に、その広さと窓辺で人目を気にしないで済むのが有難かった。男子寮の最上階に位置する貴賓室は、偶然にも学園内で一番窓の位置が高かった。おかげで俺は、獣化している時でも窓辺で寛ぐ事が出来るのだ。
――コン、コン。
俺がシャワーを終えてすぐ、部屋の扉が叩かれた。
「入ってくれ」
俺が洗い髪を乾かしながら声を張れば、続き部屋の扉が開く。
「お、やっと人型に戻ったか。セント・ヴィンセント王国はカダール皇国と違って一度降り出すと長くていけねぇぜ。向こうでは丸一日雨が降り続くなんて事はまずなかったからな」
扉から現れて軽口を叩くのは、従者のルークだ。貴賓室は、隣室に従者の滞在を想定した造りになっていて、廊下に出なくとも直接の行き来ができた。
ただしルークとはここでこそ、こうして軽口を言い合うが、一歩学園内に出れば必要以上に親しい素振りはしない。
「なに、雨の頻度自体は少ないんだ。そう考えればここの気候には十分に助けられているだろう」
俺の身分は一般生徒には公表しておらず、貴賓室の利用も単に部屋割りの都合というていを取っていた。