追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました

「……ってかよ、お前めっちゃくちゃ解くの早くねぇか?」
 粗方写し終わったところで、ルークが怪訝そうに切り出した。
「ああ。獣化してる時にあらかじめ眺めていたからな。ほとんど頭の中で解いてあったのを書き写しているだけだ」
 肉球の前足では、当たり前だがペンは持てない。だが、考える事は肉球だろうが毛むくじゃらだろうが出来る。
「は!? お前昔に、獣化している時の記憶は曖昧だって言ってなかったか? 今は違うのか!?」
「いや、今も本降りの時はそうだ。ただし、雨の入りと止みの頃、それから雨足の弱い時なんかは、八割がた意識が保てるようになってきた」
 俺の祖国は、大陸でもっとも歴史が古い大国カダール皇国だ。その祖国建国は、遥か五千年前にまで遡る。
 建国から三千年後に編纂された『建国の書』によれば、五千年の昔、天から降り立った真白い虎の神が、不毛の大地に恵みの水と祝福の緑を授けたのがカダール皇国の始まりと綴られている。同じ書の続きには、建国から三千年ほどは、真白い虎の神の子孫である皇族は、人型と獣型の両方の姿を自在に操って暮らしていたとある。
 今ではカダール皇国の民ですら、おとぎ話と疑わない者も多い建国史。しかし、これはおとぎ話でもなんでもなく、史実だ。
 いまだ国民に対し正式な公表こそしていないが、俺がこうして有難くもない先祖返りで人型と獣型の両方の姿を取っているのだから、疑う余地はなかった。

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