追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
俺の中には、セント・ヴィンセント王立学園でアイリーンと共に過ごす二年間が、彼女を手に入れる最初で最後の機会になるという予感があった。だからこそ俺は、将来の皇帝位を懸けて、アイリーンを手に入れるための二年間を勝ち取った。それをする事に、寸分の躊躇いもなかった。
それだけの決意でもって得た期間だ。学園生活が中断したからと、残り一年の留学期間を返上するなど、絶対にあり得ない事だった。
「俺は後一年、セント・ヴィンセント王国に留まってこれをなす。これは決定事項だ」
俺は故国、カダール皇国の世継ぎ皇子として誕生した。上に三人の皇女が続き、カダール皇国にとって待望の男児だった。さらにその直後、三千年振りにもなる俺の先祖返りが発覚し、皇帝一家は歓喜した。
ところが、言葉を理解し、物心がつき始めても、俺は雨と共に獣化を繰り返した。一向に変化のコントロールが出来ぬ俺に、周囲は段々と当惑しはじめた。
そんな俺に、母は常から口を酸っぱくして言っていた。
『私はあなたを愛しています。猛虎の姿のあなたも、あなたの一部であると理解しています。ですが自我が保てていない時点で、あの姿はあなたであって、本当の意味であなたではありません。少なくとも、自我すら保てぬ獣に皇帝位を継がせるわけにはまいりません』
母のこの言葉に、俺は返す言葉がなかった。ちなみに父も、母の意見に賛同していた。