追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
『その通りだ。先祖返りはたしかに目出度き事。ただし先祖は皆、獣化と人化を意識下でコントロール出来ておった。そうして実際問題、皇帝というのは時や場所を問わず、常にその心に国を置いておかねば責が果たせん。カーゴよ、其方が獣化・人化のコントロールをマスター出来ぬ時は、儂はエリザベスの夫を皇帝位の継承者として国民に告示する』
エリザベスというのは俺の長姉で、その夫のエリオットは皇家の縁戚にあたる公爵家の出。エリオットは皇帝の実子ではないが、身分的にも皇帝位継承はなんの問題もなかった。
こんなふうに父母から言われて育った俺にとって、幼少期からの目標は一貫して獣化・人化のコントロールだった。しかし、事はそう簡単ではなかった。なにより、指導にあたれる師がいない。己の感覚だけが頼りの手探り状態で、俺は今もコントロールをなせてはいない。
ちなみに、それが父の温情であったのかは定かでないが、俺の獣化・人化のコントロールに父は明確な期限を設けていなかった。なんとしてもアイリーンと同じ学舎に学びたかった俺はそれを逆手に取り、自ら期限を定め、その代わりに留学の了承を取り付けたのだ。
駐在大使は長く俺の目を見つめた後で、ゆっくりと口を開いた。
「本当に、あなた様は昔から変わらずに頑固でいらっしゃる。……いいでしょう。陛下には学園退学と、残り一年、カーゴ様が継続してセント・ヴィンセント王国に滞在する意思である事を報告いたします。それから残りの滞在期間、儂の屋敷でお過ごしになる予定だと、そうお伝えいたします」