追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
私が呟けば、前に向き直ったその背中からこれ見よがしなため息が聞こえてきた。
ともあれ、交代を拒まれてしまったのだから仕方ない。私は一旦浮かせかけた腰を、荷物を寄せて無理矢理空けた一人分のスペースに下ろした。
……う、狭っ。あ、振動でズレ込んできちゃったのね。
腰を上げた事で奪われかけてしまったスペースを取り返すべく、私は隣に積み上がる誰かの荷物を、ギューッと奥へと押しやった。ちなみに三人の人間と三人分の荷物を載せた幌馬車は、積載可能量を大幅にオーバーして運行中だ。
私が乗る荷台は、各々の荷物が所狭しと積み上げられて、かなり限界ギリギリだった。かと言って、本来一名乗りを想定した御者台にも二名が乗っているわけで、あちらも肩寄せ合って窮屈にしているに違いなかった。
「……遠慮ときたか。この安馬車にスプリングが利いていないのだから、どこに座ろうが大差はないと思い至らないところが逆にすごい」
「お前の嫁さん、逞しいもんだなぁ」
「おいルーク、適当な事を言うな。アイリーンは今はまだ嫁じゃない」
するとその窮屈な御者台の方から、二人が何事か話しているのが聞こえてきた。
「……なにげに、今はまだ、って付けて、否定はしないのな」
「事実、未来の嫁だからな」
「……さも決定事項のように言うが、彼女に選択肢はないのかよ?」
「選択肢はある。だが、アイリーンが選ぶのは俺だ」
「……なんだか俺は彼女が気の毒に感じてきたぞ」