追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
「ああ、畳むにはまだ早い。また来る」
「来年まで楽しみに待ってるぜ」
今回の来訪でおばあさんのスイーツを食べる事は叶わなかったけれど、代わりに来年の楽しみが出来た。同時におばあさんにとっても、私たちの訪問は少なからず意味のあるものだったのではないかと思えた。
「お大事になさってください」
私はとても満たされた思いで、玄関の扉に手を掛けた。
「……あなたたち、待ってちょうだい!」
扉が閉まる直前で、おばあさんに呼び止められた。
「よかったら、少し上がっていかれない? 凝ったものはお出しできないけれど、ちょうど昨日こしらえたストロベリーパイがあるの」
振り返れば、おばあさんが私たちに笑顔でこんな提案をした。
おばあさんの誘いに、私たちは互いに顔を見合わせた。嬉しいお誘いではあるけれど「日常生活を送るだけで精一杯」と言っていたおばあさんに、世話をかけてしまうのは本意じゃなかった。声には出さずとも、カーゴやルークも同じ思いである事は表情で分かった。
「一人では食べきれない量を作ってしまって、残してしまうのももったいないと困っていたところなの。それに、お皿なんかの後片付けは手伝っていただこうって思っているから遠慮はいらないわ」
おばあさんは悪戯っぽい笑みでこんなふうに付け加えた。私たちは顔を見合わせて、目と目で頷く。