追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました

「……あ、そうだわ。少し待ってちょうだい」
 シーラさんが突然、なにかに気付いた様子で居間の奥へと向かう。そうして戻って来たその手には、がま口が握られていた。
「ワイヤーの代金は、きちんと支払わせていただかなきゃ。これで足りるかしら?」
 シーラさんは、がま口の中から紙幣を取り出すと、カーゴに向かって差し出した。
「あなたの絶品のパイには、もしかしたら足りんかもしれんな」
 カーゴは差し出された紙幣を見つめ、謎の言葉を口にする。
「え?」
「それはそっくりそのまま、俺たちのパイとお茶の代金にあててくれ。もしかしたら足が出てしまうかもしれんが、そこは負けておいてくれ」
 カーゴはキョトンとした顔で見上げるシーラさんに、白い歯を見せて笑った。
「本当にあなたには敵わないわ」
 シーラさんは二~三度パチパチと目を瞬かせた後、フッと微笑んで差し出していた手を引っ込めた。
「だけど、それもいいわね。今回のパイとお茶で到底足なんて出ないから、残りは次回のお茶代として預かっておくわ。だからまた、必ず来てちょうだい」
「お、そういう事なら喜んでまた来るぜ!」
 次回のお茶という言葉を聞き付けたルークが、嬉々として答えた。
「それじゃあ、お茶が冷めない内に食べましょうか」
 私たちはストロベリーパイと紅茶を囲んで席に着いた。

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