追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
「美味しい……!」
フォークで一口頬張れば、ふわりと頬が緩む。
口内でマイベリーの果汁が弾け、カスタードと生クリーム、滑らかな二種類のクリームと溶け合って絶妙なハーモニーを奏でる。
舌にとろける優しい甘さに、僅かな酸味がアクセント。パイ生地のサクサクとした食感の後には、芳醇なバターのコクも広がって、噛みしめるごとに新たな発見をもたらした。
奥深いストロベリーパイの味わいに、しばし美味しさの余韻に酔いしれる。
……マイベリーが天上の果実なら、このストロベリーパイはまさに、天上のスイーツ――!!
珠玉のパイ、カスタードクリーム、生クリーム、マイベリー、四層の断面を眺め、私は熱い吐息をこぼした。
「おお! こりゃうめえ!」
「相変わらず、絶品だな」
ルークとカーゴも絶賛した。
「ふふふ、よかったわ」
シーラさんは嬉々として食べ進める私たちの様子を、嬉しそうに見つめていた。私たちは息つく間もなく、天上のスイーツを完食した。
……不思議だった。シーラさんのストロベリーパイは、マイベリーを別にすれば決して高級食材を使っているわけではない。地元でとれる新鮮な素材を使い、丁寧な手順を踏んで仕上げる。
その事が、こんなにも美味しいスイーツを生み出す――。
忘れかけていた、前世の趣味が疼いた。私もまた、前世の日本ではお菓子作りをこよなく愛していたのだ。