追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
「よかったです。だけどこれは、シーラさんのレシピがいいんです。私はレシピ通りに作っただけですから」
「それは謙遜よ。だって正直なところ、私が作ったものよりも美味しいんじゃないかってくらい。とにかく、これならなんの心配もなく調理を任せられるわ。こうしてアイリーンに来てもらえて、私はなんてラッキーだったのかしら」
しみじみと言われれば、なんだかくすっぐったくて、だけどそれ以上にすごく嬉しい気分になった。
「私こそ、お店のお手伝いが出来てよかったです。それにお菓子作りがまた出来て、私自身とても楽しいんです」
「あら、しばらくお菓子作りはお休みしていたの?」
厳密には、料理が好きだったのは前世の愛莉だ。アイリーンになってからは、伯爵令嬢という身分もあり、なかなか厨房に立つ機会がなかった。
「……そうですね。少し、お休みしていました」
「そう。じゃあここで、めいっぱい腕を揮ってちょうだい!」
「はいっ!」
こうして調理をクリアした私は、今度は営業手順についてシーラさんと確認をしていった。
「もうすっかり大丈夫そうね……っ、いたた」
私が一人、奥の戸棚を確認していると、シーラさんの言葉が不自然に途切れる。
「どうかしましたか?」
怪訝に思って振り返ると、シーラさんがかがんで足をさすっていた。
「大丈夫ですか!?」
「いえ、大したことないのよ。ただ、いつもより長く立っていたものだから、足に負担がかかったのかもしれないわ」
シーラさんはそう言って笑ったけれど、長時間の立ち仕事は負担が大きいようだった。