追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
――カラン、カラン。
店内にドアのベルの音が響き、来訪者の存在を告げる。休業中外していたベルは、営業再開を決めた一昨日の内に、カーゴの手で再び取り付けてもらっていた。
だけどまだ、表に営業再開の札は立てていない。
……誰だろう?
「シーラ、いたのか!」
「あら、ジェームズじゃない。どうしたの、そんなに息せき切って? もう収穫作業は終わったの?」
私が慌てて厨房から店内に顔を出せば、来訪者はシーラさんと同年くらいのお爺さんだった。お爺さんはシーラさんと顔見知りのようで、二人は親し気に話し始めた。
「どうしてって、あんたの店に人の気配があったって配送屋から聞かされて、こうして大急ぎでやってきたんだ。休業中の店に、万が一物取りでも入ってたら大ごとだ」
「まあジェームズ! あなた、わざわざ私を心配してきてくれたのね! 実はね、お店を再開する事になったのよ」
「なんだって? だが、あんた以前に一日中店に立つのは無理だって言ってたじゃないか」
「店を開けるのは私じゃないのよ。お店はね、とっても優秀な新店主が開けてくれる事になったのよ。ね、アイリーン」
シーラさんはそう言って、私に視線を向けた。ジェームズさんも、シーラさんの視線を追って振り向いた。