追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
私と目が合うと、ジェームズさんは驚いたように目を見開いた。
「はじめまして、アイリーンといいます。縁あって、今シーズン、シーラさんのお店を営業させていただく事になりました」
「なるほど、そういう事か!」
ジェームズさんは納得したように顔を頷かせ、大股で私に歩み寄った。
「アイリーンさん、この店をどうぞよろしく頼みます」
「はい、精一杯務めさせていただきます」
ジェームズさんは深く皺を刻んで笑った。
「シーラ、よかったじゃないか。それにしたって、あれだけ探しても見つからなかったのに、この時期によくこんなにいい人を見つけられたなぁ」
ジェームズさんは視線を私からシーラさんに戻すと、しみじみと言った。
「ええ、本当に幸運な巡り合わせだったわ。それからジェームズ、あの節はあなたにもずいぶんと手を尽くしてもらって、本当にお世話になったわね」
「なに、そんな事はいい。だが、本音を言うと儂は、もうこの店で一服が出来なくなってしまうんじゃないかと気が気じゃなかったんだ。店は使っていなきゃ、傷むばかりだ。なによりシーラだって、生きがいにしてた店を畳んじまったんじゃ、寂しくなっちまうだろうが」
「その通りね。あなたにはずいぶんと心配を掛けたけど、こうして最高の結果になったわ。ありがとう」
「なに、同じ村内の仲間じゃないか。困っていりゃあ助けになるのは当然だ」
ジェームズさんの言葉には、お店の営業自体より、シーラさん自身に対する労わりが滲んでいた。なんとなく二人には、他の人には分からない二人だけの深い絆があるのだと、そう思った。