追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました

 実はタピオカ入りの苺ミルクというのは、私が発案した新商品だ。数日前、シーラさんに味見をしてもらったらとても気に入ってくれて、お店で出してみたらどうかと言ってくれたのだ。
 そうして今日、ついに改良を重ねた苺ミルクの初売り出しというわけだ。
「……それ、持って帰れる?」
「もちろん大丈夫よ。すぐに用意するわね」
 私が厨房に向かおうとすると、少女が遠慮がちに私の腕を掴んだ。
「どうかした?」
 私が訊ねれば、少女は不安げな面持ちでポケットに手を入れた。
「お姉ちゃん、お金、これで足りる?」
 ポケットから差し出された手のひらには、100エーン硬貨が三枚のっかっていた。
 ……ええっと。
 少女はギュッと眉根を寄せて、窺うようにして私を見上げていた。
「ええ、足りるわよ。待っていて」
「よかったぁ!」
 私の言葉に、少女はキュッと手のひらを握り締め、安堵の笑みを浮かべた。
 私は少女の頭をポンポンッと撫でると、厨房に向かった。少女も後を付いてきて、私が持ち帰り用のカップに苺ミルクを作る様子を、カウンター越しにニコニコと眺めていた。
「ストローは差しちゃっていい?」
「ううん! ストローも持って帰る!」
 私がカップに蓋を付け、ストローを取り上げながら問えば、少女は慌てた様子で答えた。
「すぐ飲まないの?」
「うん! ハウスでまだ、お父さんがお仕事してるの。うちはね、お母さんがいないから、お父さんは仕事に家の事にいつもすごく大変なの。私がゼーゼーしちゃうと、そのお世話まで……。これはね、お父さんにあげるんだ!」

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