追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
――カラン、カラン。
「いらっしゃ……って、カーゴ!」
「やぁアイリーン」
お昼過ぎ、上天気なのに何故か手に傘を持ってカーゴが店にやってきた。
カーゴは慣れた様子で店内を進むと、厨房と対面式になっている一番奥のカウンター席に腰をおろした。私がシーラさんの店を引き継いで一週間で、この席はすっかりカーゴの定位置になっていた。
「今日は早いね」
店内の壁掛け時計に視線を向けながら、思わず首を傾げる。
カーゴはいつも閉店の一時間くらい前にやって来て、店内で時間を過ごす。そうして私の店じまいを待って、一緒に店を出るのが習慣になっていた。
「ああ、所用があってな。すまないが今日は送れそうにない。帰りはこれを使ってくれ」
カーゴはそう言って、私に傘を差し出した。
「え? こんなに上天気なのに?」
私は窓の外に広がる青空を見て、首を傾げた。
「おそらく夕方過ぎに一雨くる。長くは降らないと思うが、君の帰宅時間と被ってはいけない。一応、持っておくといい」
カーゴの天気の予想は、物凄くよく当たる。というよりも、ほとんど百発百中で当てる。
カーゴが言うのなら、確実に雨は降る。
「うん。ありがとう」
私は礼を言って、傘を受け取った。
「今日もいつものを頼む」