追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました

 時刻は現在お昼過ぎ。ふと、気になって水を向ければ、カーゴは大振りにカットしたストロベリーパイを頬張りながら、笑みを深くした。
「アイリーンのスイーツは美味い。いくらだって食べられる」
「そ、そっか」
 シーラさんのレシピ通りに作っているのだから、厳密にはシーラさんのスイーツだ。
 とにかくカーゴは、昼食後だろう閉店前の夜だろうが、山と盛られたスイーツをものともしない。
 私はこの時、ストロベリーパイ、ストロベリーワッフル、ストロベリーパンケーキにアイスクリーム等々、『いつもの』全部のせプレートを端から平らげていくカーゴを見ながら、先ほどの堂々巡りにひとつの結論を見出していた。
 ……これはもう、間違いない。どうして頻繁に顔を出すかって、そんなのはカーゴが苺のスイーツをこよなく愛しているからに決まってる――!
「よかったらこれ、私からのサービスよ」
 気分がすっきりした私は、無類の苺スイーツ好きのカーゴに、苺ミルクをサービスした。
「ん? これはメニューにはなかったよな」
 カーゴはメニューブックを取り上げると、追加した苺ミルクのページで手を止める。
「もしかして、これは君の発案じゃないか?」
 そうして見事、言い当ててみせた。
「さすがカーゴ、よく分かったわね。この間、シーラさんに出したら気に入ってくれて、お店で出してみたらどうかって言ってもらったの」
「そうか。それは楽しみだな」
 カーゴはそう言って受け取ったものの、何故かグラスを眺めるばかりでなかなか飲もうとはしなかった。そうして『いつもの』を全部食べ終えた後で、ゆっくりと味わうように飲み始めた。
「美味いな。タピオカとの相性がとてもいい。これはきっと、ここの看板メニューになるな。ごちそうさま」
 カーゴは一時間ほどを店内で過ごすと、そう言って帰っていった。
 カウンター席には、『いつもの』代金より500エーン多い金額が置かれていた。
「もうカーゴってば。……私、サービスって言ったのに」
 ポツリと呟きながら、カーゴの義理堅さに笑みがこぼれた。


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