【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
あたしは静かに一歩前に出る。
……ぶつかっちゃいたい。
何も知らない灰野くんは一歩進む。
なんで見えてないの?
あ、そっか。
灰野くんは厳戒態勢で光の中をみていたけど、あたしは暗闇で俯いていたから、あたしが先に目が慣れたんだ。
――だったら……。
あと少し、抜き足差し足で進む。
大丈夫、灰野くんはまだ見えてない。
廊下の光で目が慣れていた灰野くんのこの暗闇までの暗順応はきっとまだ少しかかる。
「藍田さん?どこ?」
手を伸ばす彼。
あとちょっと近づけば…….。