【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
見れば藍田さんが思いっきり、前からずっこけている。


それはギャグマンガのような背中だけど。


「大丈夫!?」


リホに手を引っ張られて起き上がった藍田さんは、可哀想なくらい泥だらけだ。


名札から下はずぶ濡れで、茶色と緑がべったりと……。



「きたなぁい!!」


半泣きの藍田さんを笑う人は誰もいないほど、リアルに可哀想な光景に全員の一秒が止まる。


「灰野くん早く水かけてあげて!!」


リホがひきつった顔で俺を指さして指示を飛ばすのとほぼ同時に、藍田さんにホースの先を向けた。


「つめた……っ!」


身を縮める藍田さんから水を離す。


「ごめん!」


「うー、でも汚いから流してー!」


半泣きというか、泣いている。

藍田さんは泣いている。



「大丈夫だよ。……このプールの水、全然、多分大丈夫だから」


なんだこのゴミみたいな俺のフォロー?



「うん……ありがとう」


藍田さんのお愛想が耳を通り抜ける。

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