【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「結構綺麗になったと思う……多分」
そう言ったら、ようやく少し顔を上げた。
涙に濡れた顔で、プールサイドにのぼった藍田さんは体操着から滴り落ちる水をぎゅうっと絞っている。
ぽたぽたとタイルが濡れていく。
「はぁ……。どうしよう」
そんな困り顔でこっち振り向くの?
ドキっと心臓が跳ねあがって、もう一度大きく視線をずらす。
「あたし制服取って来るね」
それは絶対汚れるって俺は断言したい。
そうなったら藍田さん、どうやって帰るつもりだよ。
俺は自分の体操着のすそをぎゅっと握って、3秒くらい考えてから。
がばっと脱いだ。
「藍田さん……俺の着ていいよ」