【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「借りていいの?」


「うん。向こうのロッカーの影ならここから見えないから、着替えてきなよ」


「ありがとう……ごめん」


藍田さんは体操着をもってプールサイドを歩いていく。


あー、よかった。とやっと息を吐いた。



「やだーん、灰野かぁっこいー!」


彗が声色を変えて、デッキブラシを持ち上げながら俺に叫んだ。


かっこいいじゃねぇよ。何呑気に言ってんだよ。



「彗もリホもまじで覚えてろよ」



「へぇー?なんのこと?」


わざとらしい彗のきょとん顔に、俺は無になる。



「ていうか、灰野くん帰宅部のくせにめちゃくちゃいい体してるね」


「いいから、早く掃除しようぜ」



リホの戯言に背を向けて、蛇口を締めた。



ナギも山本も当然のように俺をいじり倒す。


「さっきの伊吹はダサくなかった。合格!」


俺はダサい前提かよ、山本。


「ああいうの灰野できるんだねぇ、意外の意外の意外」


ナギがめちゃくちゃにうざい。



太陽に背中をじりじりと焼かれながら、プールを磨いていると。


「俺も焼こー!」と山本も上半身裸になった。


ならその体操着貸して、って言おうと思ったけど多分俺への気遣いだろうからやめた。


山本は、結構いいやつだから。


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