【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「灰野くん、ありがとう……!」
服を着て戻ってきた藍田さんは目だけそらして俺に頭を下げた。
「もうすべんないようにね」
「うん」
恥ずかしそうに微かに顔を上げた藍田さんに、ドキッとする。
俺から離れて、掃除をしに戻った彼女を当たり前みたいにずっと見ていたことに気づいて、笑いそうになった。
バカじゃん、俺。
反対側を掃除する女子たちの楽しそうな声が響いているうちに、夕暮れが差し掛かる。
水色の空にピンクが混ざり合ったころ。
「綺麗になったなぁ」
やっと掃除を終えた俺たちは、ぴかぴかに見違えたプールサイドに並んで座って足を投げ出した。
「つかれたー」
ナギはぐーっと伸びをしてから、自分の鞄を引き寄せてゴソゴソと何かを取り出す。