【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「なんで俺?俺がなんかしたの?」


灰野くんの落ち着いているのに冷たい声に、びくっと肩が震える。


「……なにもしてない」


「でも今、ナギにそう言ってたじゃん」


灰野くんがあたしの傍に来て、腕を軽く引いた。



「なんかわかんないけどさ。俺が泣かせたとして、それをなんでナギと解決しようとすんの?」


灰野くんの目に怒りが沸いている。

ドキドキと心臓がうるさく鳴り始めて、血の気が引いていく。



「ごめん……」


「だから、謝ってほしいんじゃなくて……」



はぁ……と疲れたような溜息が灰野くんから聞こえた。



涙がたまって、ゆらゆらと視界が歪んでいく。



「なにがあったのか、俺がなにをやったのか。藍田さんは俺には話してくれないの?」


「……ごめん、灰野くんのせいとかじゃないから」


だってイマサラそんな話してどうなるの?


灰野くんがあたしを踏み台にしたとしてもそんなのは、灰野くんの自由。


きっと当たり前なんだよ。

元カノが踏み台になることは。


元カノっていう立場の弱さをやっと思い知ったって、それだけのこと。


「ナギには言えて、俺には無理なんだね?」


「うん」


「あっそ。勝手にしろよ」


灰野くんはらしくもなく鞄を乱暴に置いて、教室を出て行った。


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