【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。


灰野くんは空を見上げて、


「……好きすぎてどうしていいか、わかんなくなった」


そう答えた。



「だから、藍田さんから逃げた」


灰野くんの目があたしに向けられる。



ドキドキと心臓が動いて言葉も返せずにいたら。



プップー、と存在を伝えたいだけに鳴らしたような軽いクラクションの音がした。


……わ、わ。
灰野くんの腕が、あたしを抱き寄せてる……!


守るみたいに背中を抱く灰野くんは、知らない人みたいで……。


あたし、灰野くんの方見れない。


すぐそばを車が徐行して抜けていった。


腕が離れた今も、まだこんなにどきどきしてる。


「……ありがとう」

「いや……」

「こ、こんなの。前はしなかったよね」


「だから、あの頃みたいにダサいままじゃないって」


「ダサいって……ダサかったことなんかないじゃん」


「いいよ、そういうフォロー求めてない」



本当にそんな灰野くんを知らないけど。


灰野くんはいつだってかっこよかったよ。


あたしはそういう彼しか知らないのに。





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