【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「どうした?藍田さん」
「あ……ううん……なんでもない」
” キスは今度しよう ”
あんなこと言えたのも、灰野くんにとってはもう、騒ぐようなことではないから?
「……藍田さん?」
なんか、胃がキリキリする……。
「あの、ごめん……もう遅いから、帰ってもいいかな」
「え……。じゃあ送る」
「ううん、家近いから……!ほんとに今日はありがとう」
「待って、暗いから送らせてよ」
部屋を出ようとしたあたしの手を灰野くんが掴んだ。
「ひっ」
反射的に振り払ってバチンと音が響いた。
「あ……ごめん」
謝る灰野くんははっきりと狼狽えていて。
「……ちが」
なんで、あたし……振り払っちゃったんだろう。
大好きな手のはずなのに。
気が動転してた。