【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
こんなんじゃ、またきっと変なことしちゃう。

「一人になりたいから送らなくて、大丈夫」

「……そう。なんか……ごめん」


灰野くん、何もわるくないのに。


他の誰かを大事にしていた灰野くんをくるくると頭に浮かべていくあたしが、全部悪いのに。


家を出てすぐ、ぽろっと涙が零れた。


何泣いてんだろう。


灰野くんと藤堂さんが1年も付き合ったってことは十分知ってるじゃん。

……灰野くんは藤堂さんが大好きだったことも、知ってるじゃん……。


あたしと灰野くんの中一の一カ月が藤堂さんの踏み台に、だなんてこの前へこんだけど、そんなのありえない。


踏み台になんかなるほど……あたしたちの間には灰野くんが言うように ” 何もなかった ”。


山本君がいうような照れ隠しなんかじゃないと思う。


ハグやキスしようとしたのだって、あれだけ進んでる灰野くんの感覚からしたら、本当に ” 何もなかった ” んだよ。


「……」


涙を掌で拭った。
沈む気持ちの中で、頭に浮かんだのはナギちゃん。


ポケットの中に手を入れる。


あれ?スマホがない……。


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