【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
灰野くんの家にわすれてきちゃったのかな……。
目をごしごしとふいてから、踵を返して元の道を戻っている途中、あたしのスマホをもっている灰野くんが走って来るのが見えた。
「これ忘れてったよ……って、なんで泣いてんの?」
灰野くんは目を見開いてあたしを見ている。
言えるわけないよ、こんなくだらない嫉妬で泣いてるなんて。
「あ、電話きた」
はいっと手渡されてみた画面に ” ナギちゃん ”の文字があって、その文字だけで肩の力が抜けたみたいに安心する。
「……持ってきてくれてありがとう」
「それはいいんだけど。泣いてるのは何?愁のこと?」
「ううん、ごめんね。気にしないで。また明日」
片手を振って歩き始める。
ナギちゃん、まだ着信鳴らしてる。
家に帰ったら電話しよう思ったけど。
赤信号でたちどまるのと同時に電話に出てみた。