【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。

灰野くんの家にわすれてきちゃったのかな……。


目をごしごしとふいてから、踵を返して元の道を戻っている途中、あたしのスマホをもっている灰野くんが走って来るのが見えた。


「これ忘れてったよ……って、なんで泣いてんの?」


灰野くんは目を見開いてあたしを見ている。
言えるわけないよ、こんなくだらない嫉妬で泣いてるなんて。


「あ、電話きた」


はいっと手渡されてみた画面に ” ナギちゃん ”の文字があって、その文字だけで肩の力が抜けたみたいに安心する。


「……持ってきてくれてありがとう」


「それはいいんだけど。泣いてるのは何?愁のこと?」


「ううん、ごめんね。気にしないで。また明日」


片手を振って歩き始める。


ナギちゃん、まだ着信鳴らしてる。

家に帰ったら電話しよう思ったけど。

赤信号でたちどまるのと同時に電話に出てみた。
< 298 / 400 >

この作品をシェア

pagetop