【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
リホちゃんの魔法その2。
いい雰囲気を作る。
「……て、てて、て、て」
手を、繋ぎませんか……。
って、あれ?家で手って繋いでいいのかな?
変かな?
「……藍田さんどうした?」
灰野くんが怪訝な目であたしを見てる。
「ううん……っ。あの、飲み物持ってくるね」
階段を駆け下りて、バクバクと鳴っている心臓を落ち着けようと深呼吸。
リビングのテーブルの上には置手紙があった。
” 今日は遅くなります。冷蔵庫のをチンして食べてね お母さんより”
本当に、家にふたりきりだ……。
ドクドクドクドク、一人バカみたいに心臓を鳴らして。
階段を上がっていく。
ガチャ。とドアを開けた瞬間、顔を上げた灰野くんと目が合う。
ぐりんっと、あたしは顔を大きく背けて、首が痛い。
「あの……藍田さん?」
も、もう。どきどきする……。
「これ、飲み物です」
「ありがと」
すとんと、灰野くんの隣に腰を下ろした。
あ、あれ?座る位置間違えた?
いつもここがあたしの定位置だから、こんなに傍に座っちゃったけど……。
腕と腕、触れ合いそうな距離。
「……」
灰野くんは少し顔を背けながら、ごくんとジュースを飲み込んだ。