【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「……あのさ。なんでそんな俺の方…….見てんの?」
「えっ……あの……ごめん」
「ううん、いいんだけど全然……なんか藍田さん今日変じゃない?」
「変……!?」
自分の髪と顔にバシバシと手で触れて確認するけどどこのこと……!?
「いやいやいや……そう言う意味の変じゃなくてね?いつもと違うっていうか」
「いつもと違う……」
いつもは、灰野くんに任せきり。手を繋ぐのも、キスも。
あたし、待ってるだけじゃ、もしかしてだめ?
「あっ、あの……」
って、やっぱり近すぎるよ……っ。
立ち上がって向かいに座ろうとしたんだけど、
あたし、制服のスカートを踏んでいたみたいで。
「きゃあっ」
見事にずっこけたあたしは、狙い通りみたいに、灰野くんに覆いかぶさっている。
じわじわと熱くなっていく頬とか、手に握る汗とか。
「あ……藍田さん……?」
目を丸くした灰野くんはあたしが退くのを絶対に待ってるけど。
「灰野くん……」
漆黒の瞳がゆらっとした。
目、そらさないで。
あたしのこと見て。
キスしてもいいですか……。
なんて、そんなこと、言えるわけないでしょ……っ。
がばっと起き上がったあたしは部屋の隅まで後ずさりして、ドンと壁に背中が当たる。