クローゼットに飛び込んだら、そこはイケメン天国（パラダイス）～これってもしやシンデレラストーリー！？
＊



「これは……」

アルバートさんは、目を丸くしてテーブルの上を凝視する。



「いつか、アルバート様に食べていただきたいと思ってたんですよ。
まだ、おふくろと全く同じようには作れませんが、だいぶ近付いたと思います。」

そう、アルバートさんがみつめているのは、アップルパイらしきもの。



「さぁ、ぜひ召し上がって下さい。
お友達もどうぞ。」

「では、いただこう。」

アルバートさんは優雅な所作で、パイを口に運ぶ。



「とても懐かしい味だ。
ハンナさんのパイを思い出した。
カンナ…食べてみたまえ。」

「はい。」

あ…美味しい。
この果物自体がとっても甘くてジューシーで、パイ生地はさくさくして、そのふたつがとても良い具合に絡み合ってる。



「とても美味しいです！」

「そうだろう？
デニスさん、これはハンナさんの作ったパイの味にとても近い。
良くここまで再現出来ましたね。」

「そうですか？
そう言ってもらえたら、頑張った甲斐があります。
アルバート様は、おふくろの焼くパイをとても気に入って下すってたから、いつかまた食べていただきたいと思いまして…
でも、その反面、アルバート様も成人してお忙しくなられたでしょうし、もうこんな壊れかけの宿屋になんざぁ、来られないだろうとも思ってたんです。
だから…こうして召し上がっていただけたことが、まるで夢みたいです。
おふくろもきっと天国で喜んでますよ。」

ご主人は、涙ぐみながらそう話した。
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