僕の庭
何故僕が彼女の手を握り返したのか、自分でも分からない。

名前をまだ呼んでもらいたかったからなのかもしれないし、
彼女の邪気のない笑顔に惹かれたのかもしれない。


ただ、気付けば彼女の手を取っていた。



「うわあ、すっごく手が冷えてるじゃないの。急ごう」


花保理は僕の手をぎゅっと握ったまま、ぐいぐいと歩き始めた。
僕は、自分の肩ほどの背しかない彼女の後ろを引っ張られるようにして歩いた。


「すぐ、そこだから。あっつい味噌汁飲んだら、元気になるよ」


「………………」


「あったかいお湯と手拭いも出してあげる。顔拭いたらすっきりするよ」


「………………」


彼女は返事もしない僕を、市場の端にある食堂に案内した。
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