僕の庭
このまま、帰ったほうがよいのではないだろうか。


遅まきながら思い至った僕は、来た道を戻ろうときびすを返した。


「こら! どこ行くのよ」


背中に花保理の声が飛び、僕はびくりと足を止めた。

振り返ると、小さな盆を抱えた花保理が立っていた。


「せっかく温め直したのよ。無駄になっちゃうでしょう?」


「……いや、しかし。好意に甘える訳には……」


「好意を無駄にする方が失礼だわ。ほら、そこの戸を開けてよ」


花保理は目で小屋を指し示した。


「いや、でもだな……」


「ぐずぐず言わないで! また冷めちゃうじゃない」
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