北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 佐佑が照れてくねくねとカートを揺らすのを見ると、凛乃の頬はゆるむ。
「ほんとに累さんのことが大好きなんですね」
「うん。維盛さんもでしょ」
「えっ」
 息ができなくなっているうちに、佐佑は思わせぶりな笑みを浮かべて、突然カートをぐるりと逆方向に向けた。
「じゃ、またね」
「あ、はい……」
 足取りも軽く去っていく佐佑を見送りながら、凛乃はひどく熱い自分の顔を両手で押さえた。動悸が激しくて、いきなり喉がからからだ。
 良くない。こんなの。
 ダダ洩れすぎて、すぐにでも本人にバレてしまう。1日も早くモノを片付けて、バイトを見つけて稼いで、なんなら片付けよりも、出ていくのが先だ。住むところがあれば、家政婦なんて通いでいい。
「あの家を出なきゃ」
 凛乃は声に出して自分に言い聞かせた。
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