北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「たしかに。わかってるね」
 佐佑が凛乃をヒジでつつく真似をしてから、顔を上げる。
「あ、学校の近くの総菜屋、こないだ見たらまだつぶれてなかったな。牛肉コロッケがうまいの。近いから、こんど行ってみたら?」
「どこにあるんですか?」
 佐佑が教えてくれた高校名から近隣地図を検索すると、店は駅を挟んだ反対側にある商店街を横道に入ったところにあった。
 徒歩ならツラいけど、今日は雨が降っていなかったから、物置の横で雨ざらしになっていた古い自転車で来ている。遠回りでも、行って損はない。
「あいつすげー頭良かったのにさ、近いからって高校そこにしたんだよね。おれは実力で行ったんだけど」
 佐佑が地図を覗きこみながら、なつかしそうに目を細める。
「瀬戸さんと同じ高校がよかったんじゃないですか?」
「そうかなー」
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