北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 凛乃の髪は、アゴのラインでぱっつり切りそろえられていた。以前はひとつに束ねるか、低い位置で団子にまとめていた髪は、ほどけば肩より長かった。襟足の風通しに大差はないように思えるけど、新しい髪型を恥ずかしがる凛乃には胸がうずいた。
「履歴書用の写真が長いときのままなんですよ。明後日また面接なのに、失敗しました。キノコみたいだし」
「かわいい」
 おどけて語る凛乃に思わず言うと、凛乃の顔が一気に赤く染まった。
「え、いや、ありがとうございます……あの、どうぞそっちに座っててください。急いで作るんで」
 丁寧に追っ払おうとする凛乃に、あえて近づいた。
「手伝う」
「そんな、ダメです。わたしの仕事を取らないでください」
「これは冷蔵庫に入れる?」
「あ、それはトースターでカラッとさせようと」
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