北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 白いビニール袋の輪っかに指をかけて拡げると、見覚えのある総菜屋のロゴが目に飛び込んできた。
 駅向こうにある大きな商店街の、しかも脇道にあった累の贔屓の店を、凛乃が偶然見いだす確率は低い。情報源は、考えなくてもわかる。
「牛肉コロッケが美味しいって聞いて」
 累が犯人に思い当たったことに、凛乃もすぐに気づいてフォローしてくる。
「あと、新製品でエビクリーミー揚げ春巻っていうのが、すごくおいしそうで。暑いけど、揚げ物メインでだいじょうぶですか?」
 累はうなずいた。
 佐佑の影がチラつくのは癪に障るけど、なつかしさと、ハラハラしている凛乃を安心させたい気持ちが勝る。
「おれ、好き」
「よかったー。お味噌汁とサラダだけ作るんで、待っててくださいね」
 凛乃は大根を手に、スライサーを取り出す。結局手伝えることもなく、累はビニール袋の持ち手を指でくるくると巻き上げた。コロッケと春巻からの熱さが、ほんのり伝わってくる。
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