北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
◆
「あ、いえ、こちらこそ、すみません……」
ぺこりと頭を下げた凛乃が、うつむいているうちに目のあたりをこすってから、キッと顔を上げる。
累は言葉が出てこなくなって、ただ凛乃を見返した。涙は拭けても、目のまわりが赤いのまでは、消せていなかった。
いまわかった。最初からこのひとは、泣きそうだったんだ。
面接の設定をしておきながら、なんて言って断ろうと思案していた。そうして玄関に突っ立っている凛乃を階段から見下ろしたとき、ちりん、とどこかで鈴が鳴った。
奥をうかがうように首を伸ばしていた凛乃が、つい、とこちらを見上げた。その仕草が、なぜかなつかしいもののようになじんだから、自分が外から招き入れた他人だということすら、一瞬忘れた。
ずっと以前からこの家にいたような、そのふしぎな既視感はどこから来るものなのか。けれど検証する時間を取らせてくれるどころか、凛乃は累が意に沿わない依頼主とわかるなり、拒絶をあらわにした。
「あ、いえ、こちらこそ、すみません……」
ぺこりと頭を下げた凛乃が、うつむいているうちに目のあたりをこすってから、キッと顔を上げる。
累は言葉が出てこなくなって、ただ凛乃を見返した。涙は拭けても、目のまわりが赤いのまでは、消せていなかった。
いまわかった。最初からこのひとは、泣きそうだったんだ。
面接の設定をしておきながら、なんて言って断ろうと思案していた。そうして玄関に突っ立っている凛乃を階段から見下ろしたとき、ちりん、とどこかで鈴が鳴った。
奥をうかがうように首を伸ばしていた凛乃が、つい、とこちらを見上げた。その仕草が、なぜかなつかしいもののようになじんだから、自分が外から招き入れた他人だということすら、一瞬忘れた。
ずっと以前からこの家にいたような、そのふしぎな既視感はどこから来るものなのか。けれど検証する時間を取らせてくれるどころか、凛乃は累が意に沿わない依頼主とわかるなり、拒絶をあらわにした。