北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「にゃぉん」
猫の鳴き声が聞こえる。こんな亡霊なら大歓迎だ。夢より確かで、想像より心に響く。
甘いキスにとろける凛乃の腿に、ちくりと痛みが走った。
「っつ」
思わず身体を揺らすと、累がさっと口唇を離した。
「ん?」
「にゃあ」
腿に乗っていたそれが、凛乃の代わりに応えた。毛色は3色、子猫というには少し育っているけど、まだ爪を自力で引っ込められないくらい幼くもある。毛並みはパサついているものの、姿勢にも鳴き声にも弱弱しさはない。
凛乃は累と顔を見合わせて、もう一度子猫を見る。
子猫は累が伸ばした手に、すりすりと頭をこすりつけた。累がいままで見たことのないくらい、頬をほころばせる。
ちりん。と、凛乃のすぐうしろで鈴が鳴る。
急いでふりむいたけど、そこにはだーれも、いなかった。