北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
戸惑って、玄関の三和土に目を落とす。いまにも千切れそうなボロい健康サンダルが、一足だけあった。
居る、んだよね? もう少し待ってみようかな。足腰の調子がよくないのかもしれないし。
人物像をあれこれ予想しながら、背伸びをして奥の様子をうかがう。
かすかに、ちりん、と、鈴の音が耳をかすめた。仏壇から連想したおりんのような澄んだ音じゃなくて、少し濁って寸詰まった、安物の音だ。
凛乃はふと顔をあげて、「ひぃっ」小さく悲鳴を上げた。
階段の途中にいつのまにか、男が立っていた。
若くはあるだろうにまるで生気のない彼は、長い前髪の奥から、初めて宇宙人を見たかのように凛乃を凝視していた。襟元が伸びきった白Tシャツに、色あせたネイビーのジャージ下、裸足。それにしても静かすぎる足音。
怖がってる場合じゃない。おばあちゃんの家族にも気に入ってもらわないと、未来はない。
「あの、小野里とめ子さんのご家族のかたですか?」
精いっぱいの笑顔で小首をかしげて見せる。
居る、んだよね? もう少し待ってみようかな。足腰の調子がよくないのかもしれないし。
人物像をあれこれ予想しながら、背伸びをして奥の様子をうかがう。
かすかに、ちりん、と、鈴の音が耳をかすめた。仏壇から連想したおりんのような澄んだ音じゃなくて、少し濁って寸詰まった、安物の音だ。
凛乃はふと顔をあげて、「ひぃっ」小さく悲鳴を上げた。
階段の途中にいつのまにか、男が立っていた。
若くはあるだろうにまるで生気のない彼は、長い前髪の奥から、初めて宇宙人を見たかのように凛乃を凝視していた。襟元が伸びきった白Tシャツに、色あせたネイビーのジャージ下、裸足。それにしても静かすぎる足音。
怖がってる場合じゃない。おばあちゃんの家族にも気に入ってもらわないと、未来はない。
「あの、小野里とめ子さんのご家族のかたですか?」
精いっぱいの笑顔で小首をかしげて見せる。