北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 首をひねりながらも、累は凛乃が受け取るまでペーパーボックスを押しつける。
「ありがとうございます……あの、コーヒー淹れます。ブラックでいいんですよね?」
「うん」
 累は素直にテーブルに戻った。凛乃は手早くドリップコーヒーをふたつ用意しながら、ペーパーボックスと自分の食器を置き換えた。
 昼間に食器棚から見つけたティーカップセットと、皿を2枚持ってリビングに戻る。累は目の前に置かれたコーヒーと皿を、じっと凝視している。
 凛乃はこみあげるうれしさをいまだ半信半疑な戸惑いで抑えて、ペーパーボックスを開けた。
「あれ? 1個……?」
 なかには大粒のイチゴが載ったショートケーキが、ひとつだけ入っていた。
「クリーム系は苦手……」
 累の視線は皿を念力で消してしまおうとでも言うように、まだそこにある。
「わたしだけに?」
 累は顔を上げなかったけれど、否定はしなかった。
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