北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 冷蔵庫の扉を開ける累の背中に向かって、凛乃は頭を下げた。
「勝手に瀬戸さんと連絡取れるようにしたりして、すみませんでした」
「維盛さんの自由だし」
 扉がばたんと閉じられる。
「でも、さびしいですよね?」
 ふりむいた累は凛乃がたじろぐほど、心底「なに言ってんの?」という顔をしていた。
「だれが? おれが?」
「小野里さん、が」
「意味がわからない」
 累は怒ったように口を歪めると、凛乃の胸のまえに持ち手のついたペーパーボックスを突き出した。ふわりと甘い香りが、中身を教えてくれる。
「転職祝い」
「えっ」
「転居祝い?」
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