My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
自由を手に入れた街ノーヴァ。俺は昔から親しみを込めてこの街をそう呼んでいる。
ラグは地に足が着いてすぐに猛ダッシュで宿へと向かった。俺もそれについて行く。
宿の中に入ると丁度食堂に入ろうとしていた宿の主人と目があった。
「あ、昨夜の! あの、お連れ様が大変なことに」
かなり慌てている様子で食堂を指差す主人の傍らを小さなラグがすり抜け中に入って行った。
俺もその後に続き、食堂の中を見て驚愕する。散乱している机や椅子。いたるところに付けられた刀傷。そして血痕。
ラグを探して視線を落とし、息を呑んだ。セリーンが青白い顔で床の上に横たわっていた。
浅い呼吸を繰り返していることに少し安堵するも、腕と腹に巻かれている包帯はすでに真っ赤に染まっていた。
処置をしていた町医者だろうか、主人と同じくらいの歳の男が急に入って来た俺たちを振り返る。
「先生、こちらがお連れ様です」
「あぁ、間に合って良かった。手は尽くしたのですがこれ以上は、もう……」
俺は先生に退いてもらいセリーンの傍らに膝をついた。
「セリーン、今治してやるからな」
腹に手を当てながら俺が言うと、セリーンがうっすらと目を開けた。
「私、に、触れる、な」
「癒しを、此処に……!」
医者と主人が背後で息を呑むのがわかった。