卑劣恋愛
カッターの刃は自分が思っていた以上に深く刺さっていたようで、さっきから出血は止まらない。


ベッドは血に染まり、徐々に体がだるくなっていくのを感じる。


「今ならまだ間に合う! 千恵美、救急車を!」


智樹に言われて、千恵美は渋々スマホを取り出した。


やめて!


あたしは武と一緒に逝くの!


そう思うが、もう声を出す力が残っていなかった。


体中の血液が一気に放出されていく感覚だけが、残っている。


目を閉じて見ると、洞窟の中にいるお姉さんの姿が浮かんできた。


あたしもあんな風に愛されたい。


武からの全身全霊の愛情を受け取りたい。


あたしは最後の力を振り絞って、武の体を抱きしめた。
< 258 / 262 >

この作品をシェア

pagetop