real feel
普段の主任からは感じられない、情熱的で激しい感情を見せ付けられた。
誰も知らない本当の私を、ストレートに求めてくれている主任。

まだシートは倒されたままで、再び覆い被さってきた主任が、ピッタリと身体を密着させるように優しく抱き締めてきた。

「それにしても、イチにぃを持ち出してくるとは。俺を煽るのが上手くなったもんだな、まひろ」

「イチにぃにジェラシーですか?もう菜津美と結婚するのに。あの2人のラブラブっぷりは先日確認したばかりじゃないですか」

「そうだったか?俺はお前を抱いた余韻に浸ってたから、お前しか見てなかったけどな」

え?ちょっと何。
どうしたの主任……!
私、主任の何スイッチ押しちゃったんだろう!?

「主任、ちょっと待ってくだ……」

「こんな場所で……。お前が俺に火をつけたんだからな?責任取れよ。それにしても、俺はいつまで"主任"でいればいいんだろうな……なぁ、まひろ」



──5月8日。

今日から営業部へ配属となる。

「広報部・販促課から参りました、蘭です。よろしくお願いします」

朝礼での挨拶も、もちろん"笑顔なし"
愛想を振り撒きに来た訳じゃないし、仕事さえきっちりやれば文句はないはず。

「蘭さん、今日から1ヵ月よろしく頼むよ。蘭さんには俺の補佐をしてもらうから」

「小久保課長の補佐ですか。そんな重大な役割が勤まるでしょうか」

課長の補佐なんて、主任クラスの人がやるのが妥当では?

「俺がフォローするから大丈夫。本来は主任がやるべきなんだけど、いつも補助してくれてる平沢主任が先月末から病気療養に入ってね。もうひとり頼めそうな人が居たんだけど、彼も人事交流の対象者でね。ワーセクに行ってるよ」

「それでも!営業の経験がない私より、1課の皆さんの誰かのほうが……」

「俺の決定だから。せっかく営業にきてくれたんだし、実りある時間にしてほしいからね。じゃまず説明からしようか」

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