My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「ビアンカ!!」
私が呼ぶと、彼女はゆっくりと頭をもたげこちらを見た。どっと安堵感が押し寄せる。
「良かった、無事だったんだね!」
そのままの勢いで駆け寄りその首と思われる部分を強く抱きしめる。勿論腕は回らなかったが。
すると彼女の赤い瞳がすっと細まった。ひょっとして微笑んでくれたのだろうか。嬉しくなって私はもう一度その硬く冷たい皮膚を抱きしめた。
「あのねビアンカ、悪いんだけど、どこか別の場所に移動してもらっていい? ここ危ない場所だったんだ」
「いや、その必要はねぇ」
「え?」
ラグのその声に振り返ろうとしたときだ。
「それはお前らのモノか」
その声と共に誰もいないはずの方向からガサリと茂みを踏みしめる音が聞こえ心臓が飛び上がった。
急いでそちらを向くと、そこには私と同い年くらいの女の子が立っていた。

オレンジに近い明るい髪を二つに結い、街の人達と同じ南国風の涼しげな格好をした彼女を見て、私は緊張を解いた。
一瞬例の賊かと思ったのだが違うようだ。
ただこちらを強く警戒しているのがわかって焦る。それはそうだ。こんなに大きなモンスターと一緒にいる私たちを警戒しない方がおかしい。