My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 3
「ごめんなさい! びっくりさせてしまって。彼女見た目怖いけど全然怖くないんだ」
ビアンカの首筋を撫でながら笑顔で言うと、その子は片眉を上げ私とラグとを交互に見つめた。私は更に続ける。
「えっと、この辺誰もいないと思ってて……、す、すぐに移動するから!」
「――なんだ、アタシ達を捕まえに来たんじゃないのか」
「え?」
と、丁度そのとき彼女が首から提げているものに目が留まった。それはオカリナに似た“楽器”に見えた。
「違う、お前達に訊きたいことがあって来た」
ラグが不躾に言う。
(お前“達”って……)
彼女の他に人は見当たらない。だが、今彼女も“アタシ達”という言い方をした。ということは――。
案の定彼女は警戒を強めた様子でラグを睨んだ。
「訊きたいこと?」
「あぁ」
「……そんなことを言って、やっぱりアタシ達を捕まえに来たんだろう!」
拳を強く握りそう怒鳴ると、彼女は胸の辺りに掛かっていたその楽器のようなものを素早く手にしその突起を口に含んだ。
ピイィィー!
その楽器から高く澄んだ音が辺りに響き渡る。その音には聞き覚えがあった。
(あの時聞こえた笛の音……!!)